遂に、役者人生初めての
”稽古”に参加するカサハラ青年。
紆余曲折ありながらも、
何とか食らいついていき
自身の演じる役である
”神谷椎太郎”のキャラクターを
どんどん作り上げていく中・・
本番まであと5日というところで、
突然、演出家から
「遺族たちにもセリフを与えよう」
と切り出された。
本来ならば喜ばしい展開のはずだが・・・
お芝居ド素人のカサハラ青年にとっては
とてつもないプレッシャーとなり結局
セリフを与えてもらえずに終わってしまった・・
そして
フワフワとした、不完全なままの
”神谷椎太郎”というキャラクターを引き下げ
ついに小屋入り。
そして”場当たり”が
開始されたのであった。
「よーい、ハイ!」
舞台監督の合図をきっかけに・・
完全なる真っ暗闇の中
”場当たり”が開始された。
稽古場とは違い
劇場の設備はやはり凄まじい。
ステージ上や
客席すべてにおいて
一点の光も存在しない。
だからこそ、僕は不安になる。
「(“場当たり”とは言え、この状況でお芝居をすることなど、本当にできるのだろうか!?)」
何度も稽古を重ねた
”冒頭のト書きのシーン”
しかし・・
いつもの稽古場とは違う
初めてのステージ上でのお芝居。
しかも
“本当に何も見えない”
完全な暗闇という状況。
場当たり前の
演出家の頭を言葉がよぎる。
『みなさん、怪我には気を付けてください』
本番まで
この日を入れてあと3日。
「(もし誰かが大怪我でもしてしまったら・・・この公演はどうなるのだろうか・・最悪の場合、中止なんてこともありえるのだろうか・・・)」
僕は、いつもとは
全く違う緊張感に包まれながら
何も見えない真っ暗闇の先で
”場当たり”に挑む容疑者役のみなさんの無事を
ただただ見守ることしかできなかった。
のだが・・
そんな僕の心配は
完全に“杞憂”に終わってしまった。