カサハラ
「本当に凄いですね・・・」
完全ヤンキー
「ん?何がや?」
カサハラ
「いや、容疑者役の8人ですよ」
完全ヤンキー
「せやから、どの辺がや?」
カサハラ
「いや、まずはお芝居の熱量ですよ・・!稽古中も凄かったですけど、やっぱり劇場に入ると一段テンションが上がるというか・・今までにも増して迫力が凄かったです・・」
完全ヤンキー
「ほ~なるほどな~」
カサハラ
「あと、さらに凄いのが、あれだけの熱量で演技しながらもちゃんと”場当たり”の優先事項である”確認作業”をしているところです!冷静と情熱の間と言うか、さすが意識の切り替えをできるメインのみなさんはプロだなって感じました」
完全ヤンキー
「ケント・・・」
カサハラ
「・・なんですか?」
完全ヤンキー
「テンション上がってるのは。ケントの方やな~笑」
カサハラ
「え?」
完全ヤンキー
「いや、今の”場当たり”中のお芝居なら、いつもの稽古の時の方が全然迫力あるで~!みんな力をセーブしてちゃんと”確認作業”してる、そんな感じやったぞ」
カサハラ
「え?そうですか?!僕には迫力満点に感じましたけど・・」
完全ヤンキー
「まぁ、それはきっとこの”劇場”の影響やな~」
カサハラ
「劇場の?」
完全ヤンキー
「そや、やっぱり劇場に入ると、芝居の”見え方”も変わるもんなんや」
カサハラ
「見え方、ですか?」
完全ヤンキー
「そや、いつも通りにやってるお芝居でも、稽古場から劇場のステージに変わるだけで、当然やけど、全く”見え方”が変わってくるもんや。それは演技の熱量が変わったからとか、そう言うものとは違う、”劇場でやるお芝居”だからこそ起こる変化なんや」
カサハラ
「劇場でやるお芝居・・・」
完全ヤンキー
「そや。あと、ここで大事なことが一つあるんやけどな」
カサハラ
「大事なこと、ですか?」
完全ヤンキー
「それはな~・・・」
舞台監督
「舞台上の修正が完了しました!では、続いて”Bキャスト”のメンバーで”冒頭のト書きのシーン”の場当たりを開始します!準備をお願いします!」
完全ヤンキー
「場当たり再開やな~また続きはあとで話すわ。それまでに何が大事なことか考えてみとき~!」
カサハラ
「え?教えてくれないんですか!?」
完全ヤンキー
「場当たり中にケントが自分で気が付けるかもしれへんからな、教えることは簡単やけど、自分で考えるのも大事やで~」
カサハラ
「ちょ、ちょっと・・!」
舞台監督
「では、みなさん位置につきましたので、場当たりを再開します!照明さん、お願いします!」
舞台監督の合図で
劇場内の照明は落とされ・・
再び、辺りは真っ暗闇となった。