Nさんが持ち寄ってくれた「深夜ドラマ」の
オーディションという大きなチャンスを、
エントリー失敗という大失態で
ふいにしてしまったカサハラ青年。
焦りに焦った彼は、
自分の条件にあうオーディションを
片っ端から応募することに。
「とりあえず何でもいいから・・」
そんな中
「書類審査おめでとうございます!」
との一通の連絡が・・
それはまだ見ぬ
「舞台」というフィールドからの招待状であった。
”不誠実な自信”を持ったまま、
当日オーディション会場に到着したカサハラ青年であったが、
まさかの展開に慌てふためく。
「もうダメかもしれない・・」
そう思ったとき、
リュックの中に
”逆転の一手”になるかもしれない
”あるモノ”が
入っていたことに気づくのであった。
「これを使えば・・
もしかしたら、逆転の一手になるかもしれない・・・!!」
僕はリュックの中から
“ソレ”を取り出すと・・
こっそりとズボンの
後ろポケットの中に忍ばせた。
今回のオーディションは、
とあるビルの地下一階にあり、
地下へ繋がる階段を下りてくと
少しずつ会場の全容があきらかになる。
オーディション会場は、
普段ダンス教室や何かのお稽古で使われるような
全面“鏡張りのスタジオ”。
さらに階段を下りていくと
スタジオの一番奥に2台の長机が
設置されているのが見えてくる。
向かって左側から順に
「脚本家」 「演出家」 「プロデューサー」
と書かれた張り紙を前にいかにも
“業界人っぽい”男性3人が
パイプ椅子に座り
参加者に鋭い眼を向けながら
じっくりと審査している。
「こ、こえぇ・・・」
それが第一印象だった。
その中でも特に「演出家」の人は
かなりガタイが大きく、そして、
いかにも業界人っぽいその様子はまさに・・
某養成所の
“ガタイのいい人”と
“長髪のいかにも業界人っぽい人“を
足して2で割った感じ。
だけど明らかに違うのが
「眼つき」
その演出家さんの眼光は、
“すべてを見透かしている”ような・・
なんとも不気味なものだった。