開演から数分。
出番を待つキャストたちは
楽屋のモニター前に集まった。
キャスト1
「・・・なんか、客席から笑い声が全然聞こえないね・・・」
キャスト2
「確かに・・・みんなの芝居はいい感じだけど、お客さんの反応が全然ないね。このシーンだって、稽古中はみんなが笑ってたところなのに・・・」
みな、モニターに映る
本番の様子に釘付けになっていた。
「いよいよ始まったね〜!芝居は、どんな感じ?」
そこに、制作業務を終えた
UPさんが楽屋にやってきた。
カサハラ
「あ、UPさん!実は、客席に全然笑いが起きてなくて・・・」
UPさんは
モニターを覗き込む。
UPさん
「あ〜・・なるほどね。これは、もしかしたら〜」
カサハラ
「もしかしたら?」
UPさん
「このシーン、少し”内輪笑い”になってしまった、のかもしれないな・・」
カサハラ
「え?」
”内輪笑い”
それは、コメディ舞台の現場では
よく起こってしてしまうことらしい。
稽古中、ごくたまに
”台本の狙いとは違った部分”で
笑いが生まれることもあり・・・
そこで偶然生まれた
笑いに関しては
場合によっては
それも”正解”として
作品の中に
取り込むらしいのだが・・
実際に本番で、
初見のお客さんが見た時に
それが”面白い”と感じるかは
やってみないと分からないのだ。
カサハラ
「な、なんと・・」
UPさん
「いや、でもこのシーンは、初見のお客さんでも面白さが伝わるはずだと、トネガワさんが採用したものだし・・これは、今日の客席が”かなり重い”のかもしれないな・・・」