約束の時間が近づいてきたので
僕はオーディション会場の前までやってきた。
会場は、”町内会館”のような
小さめの建物で・・
入り口から中に入って扉を開けると
すぐそこはオーディション部屋となっていた。
そのスペースは
テニスコートの半面ぐらいのサイズだろうか・・・
決して広くはないけれど
芝居の稽古などを行うには十分なものだった。
扉からオーディション部屋に入ると
向かって左側には審査員席が用意されていた。
一番手前には席には、小柄な女性が座っており・・
中央と、もう反対端の席は、まだ空席のままだった。
カサハラ
「おはようございます!」
僕なりに元気よく、小柄な女性に向かって挨拶をした。
小柄な女性
「おはようございます、お名前をよろしいですか?」
カサハラ
「カサハラケントと申します!」
小柄な女性
「はい、カサハラさんですね。では、好きな椅子に座ってお待ちください」
カサハラ
「はい!」
オーディションスペースの中央には
パイプ椅子が”5脚”用意されていた。
おそらくこの日、オーディションに
参加する人数は5人と言うことなのだろう。
「(さて・・・どこに座ろうかな・・・)」
これまでの経験から・・
おそらくオーディションを受ける順番は、
この”パイプ椅子の並び順”が大きく影響してくるだろう。
そして、これまた自身の経験上・・・
“1番手になる可能性が高い”のは
審査員席から向かって左端の席・・・
つまり扉から入って、一番奥の席が
十中八九、一番手となりうるだろう。
そうなると・・・
審査員から見て、向かって右端に座ることで
オーディションの順番は最後に回ることが出来る可能性が高い。
「(やっぱり、他の人の演技内容や審査員の様子、雰囲気をくみ取ってから自分の番を迎えられる方が良いだろう・・・)」
僕は、審査員から向かって
一番右端の席に腰を掛けようとした。
が・・・