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このタイミングで 演出家に吹っ掛けて来た



そして、10分後。


3回目の冒頭”一行のト書き”
シーンが同じ手順で開始された。





容疑者役を演じる8人は、
改めて、その場の空気をしっかりと感じ取り・・

各々がリアルを追求した演技をしていく。


真っ暗闇の中
その姿は見えずとも・・

8人の放つ波動は、
身体の奥底から溢れ出すものであり、


本物の感情、本物の反応、
本物の声が、スタジオの中でぶつかり合う。



それを肌で感じるだけで、
僕も体中の震えが止まらない。



凄すぎる・・


この8人本当に凄すぎる・・!


そして


3回目は、およそ30分後に、
電気のスイッチが押されて終了。



スタジオに明かりが戻ると、
8人は床に倒れ込んだ。


“本物の演技”はこれほどまでに
体力と精神力を使うモノなのだ。





演出家
では、10分後に、この続きのシーンからスタートします。




つ、ついに冒頭のシーンの稽古が終了だ・・・


と、いっても・・



容疑者役の8人は
この先もほぼ出ずっぱり。



10分後に再度、
身も心も削りながら、稽古に挑むのだ。




これ、マジで、やべえ・・




と、そんなことを思っていると・・



演出家
オーディション組の5人、こちらに来なさい




演出家からの突然の呼び出しだった。


僕ら5人は恐る恐る、
演出家の元へと駆けていった。


演出家
私の稽古は、どうだい?




唐突な質問だった。



なんていうか・・
今までに経験したことのない内容で驚いています



オーディション組の中で
1番年上の女性がそう答えた。


演出家
なるほどね。じゃあ君は?



演出家は、順番に
同じ質問を僕らに投げかけてくる。


みなは同じように
「今までに経験したことがない」

という感想だった。


そうなのか・・

やっぱりこの稽古は、
“普通ではない”のか・・



演出家
じゃあ、君は?



僕の番になった。



えーっと、僕はそもそも舞台の稽古が初めてなので・・
すべてが怖くて仕方ないです




僕は、素直な気持ちを述べた。



この演出家には、
偽りの感想を伝えても・・

意味を成さないと思ったからだ。


演出家
怖い、とね・・。ふふふ、そうだね、きっと怖いだろうね~





その返答すら、非常に怖い。



そして、

最後にヒノ君も当てられた。



ヒノ君
僕も、こんな稽古初めてなんで、めちゃくちゃオモロイですね。早く、あの8人の中に入りたいです




ひ、ヒノ君・・



ヒノ君は、

このタイミングで
演出家に吹っ掛けて来た。




演出家
ほう。君も、あの中に入りたいのかい?面白いこと言うね



ヒノ君
はい、入りたいです



ヒノ君の視線は、
まっすぐと演出家の方に向いている。


演出家も
その視線を外そうとしない。



なんなんだ、この二人は・・・



その張りつめた異様な空気に、
その場にいたオーディション組は固まってしまう。




演出家
ふふふ・・・まぁ、今日は参加初日なので、みなさんには“見学”だけをしてもらいます。
あと、今日の稽古終了時に配役を伝えるので楽しみにしててくださいね



そいういうと、演出家は
一度スタジオの外へ出ていった。



すると・・・



ヒノ君
なんでや・・<span>・



ヒノ君は、明らかに不満げな様子で・・・



そう漏らした。



そして、僕は、
その時のヒノ君の横顔を見て



”あらぬ違和感”を、感じ取ってしまった。



つづく・・

P.S.


いやぁ~、あの稽古初日の衝撃と言ったら、とんでもなかったですね。汗
まさに右も左も分からない状況で、あの冒頭の暗闇の稽古を3回。休憩を含めておよそ2時間近くあの異様な空気の中見学させられて、本当に精神的にヤバかったですね・・大恐怖のあまりに。

といっても、あの日が本当に、役者としてスタートした記念すべき1日だったので、その時の感情や情景をこうしてコラムとして綴ることができるのは、なんか・・とても嬉しいです(笑) 良くも?悪くも?やっぱりあの時の経験が今に繋がっていると思うので^^


次回!!


稽古初日から想定外の連続に戸惑いと恐怖を隠せないカサハラ青年。唯一その中で安心できる材料だったのが「初日は見学だけ」という演出家の一言だった。「稽古終了後に配役も発表されるし・・明日からは、少しは気持ちを切り替えて参加できるはずだ・・!」と、ポジティブに捉えようとするも・・稽古終了後の驚きの配役の発表、翌日の驚愕の稽古内容、そして誰もが予想していなかった事態の発生に・・・カサハラ青年の心身は崩壊しかけてゆくのであった・・・


お楽しみに~!


カサハラケント

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カサハラケント
カサハラケント (笠原賢人) 1988年5月17日生まれ 新潟県新発田市(旧紫雲寺町)出身 2011年、大学を卒業後、 役者・絵描き・クリエイター活動を開始。 役者としては、 主に舞台(40本以上)やCM等で活動。 絵描き・クリエイターとしては、 個人や企業・行政から依頼多数。 横浜の商業施設でのグッズ販売に、 ZeppTokyoで開催されたファッションイベントでは 自身作成のロゴがメイン採用。 2019年には、 地元新発田市の図書館で個展も開催。 また、2018年からは 新発田市と共同でプロモーションムービーを制作。 2021年に高校生とともに企画・制作したCMは 「新潟ふるさとCM大賞」で準グランプリを獲得。 その他にも、 舞台やコントライブの脚本や、 人気バンドユニットの小道具制作など 幅広くクリエイター活動を展開。 将来の夢は、 「新発田で映画を撮る」こと。 そして、全国の人に 「新発田」を「しばた」と 読んでもらえるようになること。