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カウントダウン




そして・・・・


【後半組】はスタッフさんに案内され、
エントリーナンバー順に舞台袖に待機した。



僕は「55番」。



登場まではまだ少し猶予があるので、
ここで気持ちをしっかり整えて


来たる、その時に向けて
最良の状態に持っていこうとした。



のだ、が・・



「あわあわあわ・・」



【前半組】は持ち時間が1分だったので
進行は割とゆっくりのようだったが、


【後半組】はひとり「30秒」。



オーディションが再開すると、
まさに「流れ作業」のよう。


次から次へと舞台袖から
ステージ上へ人が減っていく。





「やべぇ、気持ちが全然整わない・・」





1年間の集大成が、


こいつは、「良し」
こいつは、「悪し」



と、一瞬で判断される。
なんとも非情なものだ。



そんな中、列はどんどん進む。


そして気づけば、舞台袖から
ステージがチラリと見えるところまできた。


観客席の様子を少し見てみると、
カチッとスーツを着こなした芸能関係者の方々が、


ステージ上で披露される
演技やパフォーマンスを食い入るように・・



いや、違う・・


その精査する目は、睨みつけるように・・
それを、じっと見つめている。




そして、披露が終われば、
手元の用紙に何かメモをしている。


きっと・・


「合」・「否」


と書き連ねているのだ。




「ぬ、ぬおぉぉぉぉ・・・」



いらぬ想像はするものではない。
一瞬で緊張がピークに達する。




スタッフさん
「エントリーNO54番。〇〇さんお願いします。」





僕の前の人が呼ばれた。
54番の彼は戦場に旅立っていった。




つまり、僕の出番まで
あと30秒。




遂に、
この1年間の集大成までの
“カウントダウン”が始まった。




舞台袖から、
観客席の奥まで見える。


用意されたパイプ椅子
およそ400個はすべて埋まっている。

まさに満員御礼。



そして・・・・



















スタッフさん
「エントリーNo.55。
カサハラケントさん。お願いします」





「はい!!!!」




僕は自分自身を鼓舞するように
大きな返事をした。


さぁ行くぞ・・・!!





直感




僕は凄まじい緊張感の中、
ステージ中央に向かって歩き出す。



その瞬間、
“長髪のいかにも業界人っぽい教務主任”
の言葉が頭をよぎる。




『下向いて歩いたら自信なさそうにみえるだろ!』




そうだった!

中央のバミリに目を落として歩くところだった!
これでは印象が悪くなる・・センキュー長髪!



僕は、改めて
しっかり目線を上げて堂々と
ステージ中央に向かって歩く。











「あれ?ステージ中央ってどの辺だ?」




やばい、目線を上げたせいで、
中央のバミリの位置が分からない。



がしかし、
今更、顔下げてバミリの位置を
確認するなんてできない。


しかも、観客席の最前列との
距離はおよそ2メートル。


目線だけ下げるのも、
気づかれるくらいの接近戦。





もう何歩くらい歩いたか分からない・・


目線を落とすこともできない・・


ここは今どこ・・・?





もうこれは、

直感しかない!!



大体のステージのサイズ、
リハーサルでの位置感覚。


僕は、直感で

「中央だと思うところ」

で、止まることにした。




「ここや!」




僕は、歩を止め
観客席の方を振り返った。








やべぇ、全然手前だった…






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カサハラケント
カサハラケント (笠原賢人) 1988年5月17日生まれ 新潟県新発田市(旧紫雲寺町)出身 2011年、大学を卒業後、 役者・絵描き・クリエイター活動を開始。 役者としては、 主に舞台(40本以上)やCM等で活動。 絵描き・クリエイターとしては、 個人や企業・行政から依頼多数。 横浜の商業施設でのグッズ販売に、 ZeppTokyoで開催されたファッションイベントでは 自身作成のロゴがメイン採用。 2019年には、 地元新発田市の図書館で個展も開催。 また、2018年からは 新発田市と共同でプロモーションムービーを制作。 2021年に高校生とともに企画・制作したCMは 「新潟ふるさとCM大賞」で準グランプリを獲得。 その他にも、 舞台やコントライブの脚本や、 人気バンドユニットの小道具制作など 幅広くクリエイター活動を展開。 将来の夢は、 「新発田で映画を撮る」こと。 そして、全国の人に 「新発田」を「しばた」と 読んでもらえるようになること。

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