僕は焦ってしまったことで、
気持ち早めに止まってしまっていた。
さぁ、どうする。
中途半端な位置で
立ち止まってしまったぞ、俺。
再び歩いて、
ちゃんと中央のバミリまで行くか?
それとも、「ここ」で始めちゃうか?
僕は、瞬時に決断した。
僕
「エントリーNo.55。カサハラケントです。
宜しくお願いします!!」
僕は“後者”を選んでしまった。
『え?あそこで始めるの?』
と言わんばかりに、
観客席は少しざわつく。
「やべぇ、ちゃんと中央まで
行き直してからやるべきだったか!?」
僕はテンパる。
でも、もうやるしかない!
この中途半端な位置で、
僕の・・・
1年間の集大成
「勝負のオーディション」の本番は
残酷にもスタートした。
僕は、“30秒”と言う
限られた時間の中で・・・
本番1時間前に
「しんみり系」から「明るい系」に変更した
「自分らしく」「不自然のない」演技プランを・・
する予定だったのだが、
直前にテンパってしまったせいで
“どっちとも付かない”
“自分でも訳の分からない”
そんなテンションで演じてしまった。
「やばい!こんなはずじゃ・・
こんなはずじゃなかったのに・・!!」
僕は演じながら、
そう心の中で叫んだ。
そして、
あっという間に30秒は終了。
「ありがとうございました」
僕は、ステージを後にした。
終了です。
いろんな意味で、
僕の1年間は、これで終了です。
あれから2週間後。
オーディション結果発表の日がきた。
僕はこの2週間。
「これほどにもか」というくらい
分かりやすく落ち込んでいた。
正直、行っても行かなくても
「結果は同じ」だろう。
あんな出来のパフォーマンスで
「手を上げる」芸能事務所があろうものか。
あんなことになるのなら、
演技プランなんか変えなければよかった・・
たった1時間で作り替えた
演技プランでどうにかなるなんて
そんな甘い考え方が
愚かすぎる・・・
しっかり練習した演技プランを
最初からやるつもりなら
きっとあんなに
テンパることはなかったはずだ・・
なんて、
もう戻ることのない過去に何度も後悔をする。
すでに、後の祭りである。
ただ・・
「ケント、一緒に結果見に行こうぜ」
とマーシーに誘われたので、仕方なく・・・
僕は、結果を見に行くことにした。