前回までのあらすじ・・・
某養成所の特待生オーディションに
”音楽コース”でエントリーすることを決めたカサハラ青年。
いざ会場に到着すると、音楽コースの”歌唱審査”では、
CD音源を持参しなければならなかったことが判明し、愕然とする。
「少しでも合格する可能性を高めるために、
音楽コースに決めたのに・・これでは本末転倒だ。」
カサハラ青年は、なんとかそのピンチを乗り越えようと
色々と策を練るもあえなく失敗に終わる・・・
「もう諦めて帰ろう」
そう思い、オーディション会場を後にしようとするが、
退室する寸前で”ガタイのいい人”に足止めされてしまい、
カサハラ青年は失意のまま
オーディションを受けざるを得なくなってしまったのであった・・
ガタイ
「では、みなさんお待たせしました!
これから”某養成所 特待生オーディション”を開始します!」
僕
「あぁ・・始まってしまった・・」
僕は、この場から立ち去ることもできず・・
だからと言って音楽コースの審査を受けるための
CD音源も持ち込んでおらず・・
「マジでどうしよう」状態。
ガタイ
「では、これからオーディションを始めたいと思います!
では、エントリー順に4人ずつ、オーディションルームへご案内しますね。
終わり次第、各自解散となります!」
僕
「エントリー順ということは・・・たぶん最終組か?」
僕はこの日、遅刻はしなかったが、
結構時間ギリギリで会場に到着していたため、
エントリー番号は、最後から2番目の「19番」だった。
ガタイ
「では、エントリー番号①~④の方、
荷物をもってご移動お願いしますっ!」
そうアナウンスされ、
ガタイのいい人に連れられて、
エントリー番号①~④の4人が控室を出ていくと・・
ガラッ!
「失礼します!」
「失礼します!」
「失礼します!」
「失礼します!」
ガラッ!
と、控室のすぐ外から扉の開閉する音と、
参加者たちの気合の入った挨拶が聞こえてきた。
そして直後に、
ガタイのいい人が控室に戻ってきた。
ガタイ
「さぁ今、一組目のオーディションが開始しましたよ!
みなさんも自分の順番が来るまで、しっかり準備して待っててくださいね!」
控室で順番を待つメンバーは、
おのおのまた審査に向けて練習を再開した。
俳優・タレントコースを受講するメンバーは、
台本を片手にセリフの確認をし・・
音楽コースの受講するメンバーは、
壁に向かってアカペラで歌の練習をしたり、
中にはギターを持ち込んでいる人もいて、
よく聞いてみるとオリジナルソングの練習しているようだった。
僕
「ひゃ~、すでにオリジナルソングを持っているなんて・・・」
こんなにも、このオーディションに懸けている人たちを前に、
審査用のCD音源すら持ってきていない自分に嫌気が差しすぎる。
すると、何も練習せず
周りをキョロキョロ見渡してばかりの男を不信に思ったのか、
ガタイのいい人が近づいてきた。
ガタイ
「カサハラ君、どうしたんだい?みんなみたいに練習しないのかい?」
僕
「えーっと、実は・・・」
一度、諦めて帰ろうとした身。
審査用のCD音源を用意していなかったこと・・・
「テレビに出る人になりたい」という漠然とした夢しかもっていなく、
俳優コース・音楽コースのどちらを選ぼうかすら決め切れていなかったこと・・・
ガタイのいい人に止められなかったら、諦めて帰ろうとしていたこと・・・