そして、
前夜に万全な状態で
眠りについた僕は・・
稽古当日、
軽く寝坊した。
やべぇ!やべぇ!
と焦りながらも、
ちゃんと急げば稽古開始までには
ギリギリ間に合う時間に到着できるので
ひとつひとつ忘れ物をしないように
きっちりと用意して・・
僕はアパートを駆け出した。
そして、連日乗り慣れた
都営地下鉄で稽古場の最寄り駅までつくと・・・
そこで、前日までと同じように
自販機で缶コーヒーを買い
一気にそれを飲み干した。
僕は、緊張やプレッシャーがかかるときは
何かと自分の中でルーティーンを作って
「今日も、いつもと同じ日常だから大丈夫だよ」
と、自分に言い聞かせるように
心と身体の落ち着きを保とうとする。
そして、
僕は前日までと同じ道をそそくさと歩き、
前日まで
オーディションが行われていた
“あのスタジオ”に到着した。
これから2週間、
また、このスタジオにお世話になるのだ。
しかし・・
この見慣れた場所も、
今までとは・・大きく異なる。
昨日までとは全く違う
緊張感、重圧感。
今日からこのスタジオは
「プロの現場」に変わるのだ。
全身に小刻みな
震えを覚えながらも、
僕はゆっくりと深呼吸をし、
心を落ち着かせて・・
入口の扉を開けた。
そして、スタジオに繋がる
階段をゆっくり降りると・・
大人気2.5次元
ミュージカル出身の主演俳優さんに
テレビでも何度も拝見したことのある
ヒロイン役の女性アイドルさん
そして・・
某大人気アニメの大人気キャラクターの
声優を務める大ベテラン俳優さんと・・
プロの役者のみなさんは
とても和やかな雰囲気で・・
稽古の開始に向けて
各々ウォーミングアップをしていた。
しかし・・
「うわぁ・・なんて空間なんだ・・・
緊張とプレシャーで押しつぶされそうだ・・」
和やかであっても、
プロ達が醸し出す威圧感、オーラを前にして
完全に僕は、
ビビり散らしてした。
僕は誰かに助けを求めるがごとく
スタジオの中をキョロキョロ見渡すと・・
端っこの方に前日オーディションで
一緒に合格となった「ヒノ君」の姿があった。
まさに、大砂原の中のオアシス。
僕は、烈火のごとく
ヒノ君の元へと向かった。
僕
「ヒノ君!おはよう!」
ヒノ君
「お!カサハラ君、今日から、またよろしくね~!」
僕は少しでも
緊張と不安を取り除くように、
見よう見まねで
ウォーミングアップをしながら・・
ヒノ君と当たり障りのない会話を続けた。
すると・・
「まもなく演出家が到着しますので、
稽古開始の準備をお願いします」
ストレッチレディのアナウンスだった。
それまで、和気あいあいとしていた
稽古場の雰囲気は一瞬でピリついた。
出演者のみなさんの表情も
瞬く間に本番モードに切り替わる。
すると・・
「ズシン、ズシン・・」
スタジオの上から、
階段を下りる音が聞こえてくる。
そして、
少しずつその姿が見えてくる。
あの“演出家”の登場だ。
演出家は、
スタジオに降りてくると・・
全員の顔をじっと見回し
不敵な笑みを浮かべながら・・
演出席に、
ゆっくりと腰を下ろした。
僕は、ゆっくり息を吸い・・・・
ゆっくりと大きく吐いた。
「大丈夫。大丈夫だ。」
僕の役者人生は・・・
この瞬間、始まりを告げる。
演出家
「では、本日の稽古を始めます。」
つづく・・
いやぁ~今思い出しても、手汗が止まらないですね・・(汗) 僕の役者人生がスタートした日のことは、今でもはっきり覚えています。本当に何も分からない状態で、不安で押しつぶされそうな毎日でしたけど、あの時を乗り越えたからこそ、今に繋がってるんだなっていうのは本当に感じます^^
次回!!
ついに「役者人生」がスタートしたカサハラ青年。何も分からない状態でも、ひとつずつ学んで、吸収して、なんとか食らいついてゆく・・しかし、そんなカサハラ青年の前に待っていたのは予想外の展開の連続と、突然の別れだった・・・
お楽しみに~!!
カサハラケント
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