「っていうか・・いくらオーディションで合格したからって・・・
本番まで2週間しかないこの状況で、良い役を与えられるモノなのか?」
台本を4分の1くらいまで読み進めたところで
僕は一度最初のページに戻り・・・
話のあらすじと登場人物を、
再度確認してみることにした。
今回のお話は、
とある殺人事件の容疑者8人が密室に集められ、
制限時間内にその中から真犯人を見つけ出す
というサスペンス物語。
登場人物は・・
容疑者の8人と、刑事2人。
そして、被害者の遺族が3人。
台本に役名が書いてあるのは、
この13人分となる。
「ふむふむ、ここまで台本を読んだ感じだと、
容疑者の8人はほぼ舞台上に出ずっぱり・・」
「そんな8人の中に、これからオーディション組が合流して
たった2週間で仕上げていくのは現実的に考えてあり得ない・・・」
「つまり、この容疑者8人に役は、
すでに稽古に入っている一流の役者さんたちが担うに違いない・・!」
と、なると・・・
要所、要所で登場する
「刑事の2人」と「遺族の3人」の
どれかの役に僕が
振り分けられる可能性は高くなるはずだ・・
そして
そこから、
僕の推理は細部に渡ってく。
「おやおや、待てよ・・」
僕は、刑事と遺族の
“5人の役名”に焦点を当てる。
すると・・
「それぞれの役名からして・・刑事と遺族たち5役の男女比率は・・・
今回のオーディションで合格したメンバーと同じく、“男性3人、女性2人”だ・・!」
僕は役名を確認し、
刑事は「男1・女1」
遺族は「男2・女1」
ということを断定できた。
つまり・・
今回のオーディションで合格した5人は
「刑事」もしくは「遺族」の配役に振り分けられるがことが・・
ほぼ確定。
「100%とは言い切れないが・・・・
99%間違いないはずだ・・!」
そうなると話は早い。
「このまま台本の残り“4分の3”を読み進めるのでは、
きっと一睡もできずに朝を迎えてしまうだろうから・・
とりあえず、「刑事」と「遺族」の
登場するシーンだけしっかり読んでおこう・・!」
この物語に登場する
刑事たちにも引かぬ劣らぬ名推理。
学生時代に
「文系」科目が苦手だった分
こういった
抜け道を見つけていくような・・
パズルをはめていくような・・
「理系脳」っぽい思考は、
昔からよく働いたものだ。
こうして稽古前夜、
僕は大幅な時短に成功し・・
思っている以上に早く
寝床につくことができたのだった。