いや、これは確実にそうである。
最初のグループはまだしも、
審査が続いていくにつれてみな・・
「相手に対して高評価を
つけないといけない雰囲気だ・・」
「この流れで相手に高評価をもらったら、
自分も相手に高評価をつけなければ申し訳ない・・」
という空気になっている。
恐ろしや、人間の心理。
このままでは、
みなが同じように・・・
お互いを褒め合う
「高評価」ばかりの結果になってしまう。
もはや、そうなってしまっては・・
僕が上手くヒノ君に
「返報性の原理」を使って
褒めちぎってもらったとしても・・
結果として、
他のみんなと同じような
「高評価」を比べ合うだけで・・
何ひとつ有利に立つことはできないのだ。
「うわぁ・・最悪や・・・」
この時点で、
僕の「返報性の原理」をもちいた
“必勝法”はもろくも崩れ去った。
いや、でも・・
逆にこのガチガチに固まってしまった
「高評価の空気を壊す」ことができれば・・
もしかしたら演出家自身からは、
高評価を受けられる可能性があるかもしれない・・
「高評価の空気を壊す」
それは・・
どんなに素晴らしい
演技内容だったとしても、
ヒノ君が演じる“僕の演技”を
「完全否定する」ことだ。
あえてこの空気の中で
他とは全く違う評価を下すという・・
異端の行為。
これくらい
インパクトのあることをしなければ
もはやこの状況で
生き残ることはできない・・
そう思ったのだ。
「すまぬ、ヒノ君。俺のために死んでくれ。」