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作品の世界観が破壊される


カサハラ
「・・・・・・」



ヒノウエさんからの指摘に、
僕は一切の反論の言葉も出なかった。

まさに、ぐうの音もでなかった。


考えが甘すぎた・・・

ヒノウエさんの言うとおりである・・・


被害者の名前も、
その家族の名前も分からない人間が、

この”遺族たち”の中に存在するなんて・・・

有り得ないことだ。



少し考えれば至って
”普通”であることさえ・・・


僕は、想像に及ばなかった。



ヒノウエさん
カサハラさん、先ほどの冒頭から刑事登場のシーンまでの稽古、見させてもらいました。それを見たときに、”きっとこの人は遺族役のバックボーンを考えてきていないな”とすぐにわかりました



カサハラ
「え・・どうして・・・!?」



ヒノウエさん
アナタだけが、あなた自身のまま”代役”を演じていたからです



カサハラ
「僕自身のまま・・・?」



ど、どういうことなのだ・・?


ヒノウエさん
他の代役のミナサンは、代役とは言え、少しでも台本のキャラクターに寄せて演じようとしている様子が見受けられました。これは、予めシッカリと台本を読んできたからこそ出来るものだとワタシは思います



カサハラ
「ほ、ほう・・・」



ヒノウエさん
しかし、カサハラさんは、キャラクターに少しも寄せることなく、”カサハラさん自身”で代役を演じていました。




確かにそうなのである・・


僕は、台本のキャラクターに寄せる余裕など全くなく、
完全に”自分自身”のまま、その台本の流れに沿って演じていたのだ。


ヒノウエさん
カサハラさん自身で演じる代役も、見ていてとてもオモシロかったです。しかし、それでは、他の容疑者役の人とのやり取りで矛盾が生じてしまったり、台本の流れに亀裂を生む可能性が高くなります。カサハラさんも、演じていて違和感などを感じませんでしたか



「あ・・もしかして・・・」


これだったのか・・・・
冒頭から刑事登場のシーンの稽古のあとに感じた

腑に落ちない”気持ち


その正体は・・・


自分自身のまま演じている
ことから生まれる



違和感”だったのだ。



ヒノウエさん
このままでは、カサハラさんの本役である遺族Cという役でも、きっと違和感を感じたまま演じてしまうことになるデショウ。



カサハラ
「・・・・」



ヒノウエさん
そのためには、まずは遺族の”バックボーン”をしっかりと作ることデス。年齢、職業、趣味嗜好、そして被害者との関係性など。

しっかり作り上げたバックボーンの先に、自然と現れる人物像、キャラクターというものが、今回カサハラさんが演じる”遺族C”の姿となります。

それが出来なかった時は、カサハラさんの演技によって、作品の世界観が破壊される可能性があるので、注意シテクダサイ。



カサハラ
作品の世界観が破壊・・・



僕は息を飲んだ。


カサハラ
「は、はい・・わかりました・・・!」



ヒノウエさん
ヨロシクお願いします




演技というものは、
本当に底が計り知れないものである。


それぞれの役の
設定やバックボーン。


その一つ一つに少しでも
”嘘偽りが存在”した時点で・・・


その作品の世界観は、
脆くも崩れ落ちてしまう。



ヒノウエさんからの言葉で、
僕は改めて”演技の難しさ”を認識するとともに、


一つの演技が作品に与える
”大きな影響”というものを・・・


少しずつ理解していくこととなったのだ。






つづく・・・

P.S.

いやぁ~、ヒノウエさんの突然の登場には驚きましたね・・汗
本当にこの現場は次から次へといろんな展開が待っているので、稽古中は一息つく間もなかったですね・・
思い出すだけで、今でもソワソワしてしまいます(笑)


そして・・・

今週で何と【第40話】を突破しました・・・・!!


これもすべて、
毎週ご高覧いただくみなさまのおかげでございます!!!m(__)m涙



これからも、50回・・・100回・・・と、
末永く長くみなさまに楽しんいただけるコラムを書けるよう

日々頑張ってゆきます
\(^O^)/


カサハラケント


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カサハラケント
カサハラケント (笠原賢人) 1988年5月17日生まれ 新潟県新発田市(旧紫雲寺町)出身 2011年、大学を卒業後、 役者・絵描き・クリエイター活動を開始。 役者としては、 主に舞台(40本以上)やCM等で活動。 絵描き・クリエイターとしては、 個人や企業・行政から依頼多数。 横浜の商業施設でのグッズ販売に、 ZeppTokyoで開催されたファッションイベントでは 自身作成のロゴがメイン採用。 2019年には、 地元新発田市の図書館で個展も開催。 また、2018年からは 新発田市と共同でプロモーションムービーを制作。 2021年に高校生とともに企画・制作したCMは 「新潟ふるさとCM大賞」で準グランプリを獲得。 その他にも、 舞台やコントライブの脚本や、 人気バンドユニットの小道具制作など 幅広くクリエイター活動を展開。 将来の夢は、 「新発田で映画を撮る」こと。 そして、全国の人に 「新発田」を「しばた」と 読んでもらえるようになること。