遂に、役者人生初めての
”稽古”に参加するカサハラ青年。
振り分けられた配役が”遺族C”という
アンサンブル(エキストラ的な感じ)だったため
「セリフもないし、稽古もそこまで大変じゃないだろう」
などという軽い気持ちでいたのだが、
急遽”容疑者役”の代役として
稽古にガッツリ参加することに・・・
人生初めての舞台稽古で、
メインの容疑者8人の代役という・・・
これまでかつてないほどの
急展開と極限プレッシャーの中ではあったが、
なんとか、なんとか、
やり過ごすことができたカサハラ青年。
だったのだが、
稽古後の完全ヤンキーからの
”飲み”の誘いを断ることが出来ず・・・
最寄り駅までの終電を逃してしまう・・・
しかし、紆余曲折しながらも、
なんとか日が昇るころに徒歩で帰宅し、
少しの仮眠をとったあと、
再び稽古に向けて台本を読み込むのであった・・・
「よし・・いくか~!!!」
何だろう
この清々しい気持ちは・・・
台本と動きやすい服装を
リュックに詰め込み
僕は颯爽と
玄関を飛び出した。
自宅に帰ってきたときは
まだ低く位置していたお天道様も、
この時間になると
遥か上空から僕を照らしている。
「気を付けて、いきなはれやぁ」
と言わんばかり
彼は僕に”大笑顔”を向けていた。
「ったく・・今日は一段と眩しいなぁ~!いってくるぜぇ!」
僕は目を細めながら
空に向かってそう告げて
最寄りの駅まで
自転車を飛ばした。
はぁ~
やってしまったぜ。
台本を読みながら・・・
寝落ちしてしまっていたぜ!!!
もう、焦りを通り越して
変なテンションになってしまっているぜ。
いつ寝落ちしてしまったのか。
どこまで読んで
意識を失ってしまったのか。
全く記憶がない。
ただ一つだけわかっている。
稽古初日の
プレッシャーと疲労感。
さらに
終電を逃してからの
13キロ、3時間弱の徒歩帰宅。
しかも
スマホの電池が切れてからは
さらに遠回り。
そんな困憊の中での、帰宅。
しかし・・
そこでハイになり
たった2時間の仮眠ののち
再度、台本の読み込み。
そりゃ・・・
寝落ちるわ!
いやぁ~いい!!
もう、そんなことはいい!
とりあえず、
全力で漕げばギリギリの電車に間に合う!
僕は、お天道様のご加護を信じて、
自転車のペダルを一心不乱に漕ぎ続けた。