遂に役者人生初めての
”稽古”に参加するカサハラ青年。
振り分けられた配役が”遺族C”という
アンサンブル(エキストラ的な感じ)だったため
「セリフもないし、稽古もそこまで大変じゃないだろう」
などという軽い気持ちでいたのだが、
急遽”容疑者役”の代役として
稽古にガッツリ参加することに・・・
人生初めての舞台稽古で、
メインの容疑者8人の代役という
これまでかつてないほどの急展開と
極限プレッシャーの中ではあったが・・
なんとか、なんとか、
やり過ごすことができたのだが、その矢先・・・
「ヒノ君、降板」
という衝撃の報せが届いたのであった・・・
「まさか降板するなんて・・・」
ヒノ君が降板した。
僕は、その事態に驚きを隠せなかった。
何故だ・・・
あんなにも大変な思いをして
オーディションを勝ち抜いて
”舞台出演”の切符を獲得したというのに。
全く理解ができない。
しかも
完全ヤンキーが言っていたが・・
ヒノ君は誰もが知る
”大手芸能事務所”も
辞めるかもとのこと。
もう・・・
意味が分からなすぎる。
何故、そんな恵まれた環境を
自ら手放すような行為をするのか・・
完全ヤンキー
「やっぱり、ヒノ君は降板か~」
カサハラ
「え?」
完全ヤンキー
「いや、彼のことやから、昨日の稽古初日の様子や、今日稽古に来てない時点でそんな気がしてたわ~」
カサハラ
「そうだったんですか?!」
完全ヤンキー
「彼はプライドも高そうやから、きっと”遺族たち”って一括りにまとめられた”アンサンブル”の配役が嫌やったんやろな~」
やはり、演技経験者の人にとっては、
アンサンブルという配役には、納得がいかないものなのか・・・
カサハラ
「アンサンブルって、エキストラみたいなものですよね?・・・僕は、演技経験全然ないんで、アンサンブルでも舞台に出演できるって決まったときはとても嬉しかったですけど・・これから役者として生きていく為には、やっぱりそれじゃダメですよね」
まだまだ自分の考えは甘い。
これから目指していく場所は、
もっともっと険しいものになるはず。
ヒノ君みたいに、
納得がいかなければ辞退するくらいの
覚悟を持たなければならないのだ・・
完全ヤンキー
「いや、そんなことないで~」
カサハラ
「え?」
完全ヤンキー
「アンサンブルも、大事な役割や。作品のクオリティやリアリティを高めるためにも、アンサンブルは絶対に必要な”役”なんやで。」
カサハラ
「絶対に必要な”役”・・・」
完全ヤンキー
「まぁ、ヒノ君の気持ちも分からなくはないで。役者やってるなら誰だって作品のメインキャストを務めたいと思うのは当然や。俺やって、メインの”容疑者役”やれたらなって思ってたけどな。でも、アンサンブルに配役されたからって辞めたりせえへんで。どんな配役でも、その作品の世界で生きている人間としては、みんな、その”価値は平等”や。現実世界でも、人間はみんな平等やろ?」
カサハラ
「た、確かに・・・」
完全ヤンキー
「役に大小なんて存在せえへん」
カサハラ
「そ、そうですね・・・!」
なんなんだ、
この完全ヤンキーは・・・
チャラチャラした見た目だけで
判断してはならない。
僕は、役者としてとても大事なことを、
完全ヤンキーから教えてもらえた気がした。
カサハラ
「ありがとうございます・・!僕、与えられた”役”をしっかり全うします!」
完全ヤンキー
「俺もや~!がんばろな~」