取材やメディア掲載、広告出稿に関してのご依頼、掲載記事に関するお問合せはこちら

お問い合わせフォーム

公式SNSでも発信中

【庵野秀明氏がノリノリ!?】「機動戦士ガンダム ジークアクス」鶴巻和哉監督(五泉市出身)単独インタビュー②まさかの制作秘話

インタビュー記事

2025.09.02

  • facebook
  • twitter
  • LINE

放送開始直後から大きなムーブメントを巻き起こした「機動戦士ガンダム ジークアクス」。新潟県五泉市出身の鶴巻監督が、TeNYのインタビューにウラガワをガッツリ教えてくれました!今回は庵野秀明氏との秘話が飛び出す!

===============
【鶴巻和哉】
新潟県五泉市出身。日本を代表するアニメ監督、アニメーターの一人。株式会社カラー取締役。
監督作に「フリクリ」「トップをねらえ2!」「龍の歯医者」など。
庵野秀明監督の「新世紀エヴァンゲリオン」で副監督を務め、「ヱヴァンゲリヲン新劇場版」でも監督として総監督・庵野秀明を補佐。
2021年公開の「シン・エヴァンゲリオン劇場版」では監督を務めた。
===============

思い入れは「やっぱ、シャリア・ブル」

――登場人物で思い入れがあるのは?
【鶴巻監督】
もちろんマチュ!
って言いたいけど、やっぱシャリア・ブル。

「ジークアクス」の主人公「マチュ」ことアマテ・ユズリハ

【鶴巻監督】
シャリア・ブルは企画の肝というか、出すことで架空の歴史になった世界をうまく表現できるかなと思っていて。
シャリア・ブルは元々の歴史の中では一話限り出てきて、死んでいるキャラクターなので、その人が戦後も生きてるというのは、歴史が変わってしまったことのいい描写になるかなと思ったので。
シャリア・ブルをどんだけ魅力的に描いていけるかな、っていう、そこが面白かった。

ジークアクスは…「行き当たりばったり」で作った⁉

――実は行き当たりばったりだった、と聞きました。
そう、行き当たりばったりで作ったんです。
もちろん、最後まできっちり全体構成を考えた上で、それに則って作っていく事もしたかったんだけれど、結果的には1話ずつ作っていく、みたいな。
もちろん全く(構想が)無いわけじゃないんだけど、クライマックス付近にある描写の結構な部分は、その時に考えている感じで、元々用意されていた展開…ではないのが多かったかな。

「より面白くするにはどうしたらいい?」みたいなことだったかな、と思うんですよね。
最初からプランを作って、設計図通りに最後まで作っていくのが良い作品になるんだろうなと思っていたし、最初はそうしたいと思っていたんだけれど、結果的に、作っていく過程で「もっと面白くしたい」…例えば、決まっていることがあったとして、「ここでこうなる」「次の場所でこうなる」みたいに決まっていたとしても、もっと面白くしたいと思ったら、それを一回破棄して、もっと面白いと思う方に…と変えていたので、その結果こうなっちゃったかなって。

「庵野が結構ノリノリに」

――「行き当たりばったり」で、誰にも怒られなかった?
【鶴巻監督】
企画書を出したときから怒られると思いながら作っているんですが、あまり怒られなかったんだよなあ。
企画を出したときに、庵野が最初に結構ノリノリになったんですよね。「面白そう!」と言ってて。
庵野もこの企画なら「やりたいことがたくさんあるんだけど」みたいな感じになっていて、これは意外とみんな面白がってもらえるのかな、と思ったのがありました。
――庵野秀明監督との出会いは?
【鶴巻監督】
高校時代に、僕よりも全然先に進んでたオタクから、新潟大学で上映会があるって話があって。
当時で言う大学のアニメサークルみたいな、アニメとかオタクっぽい映画を作っているようなサークルの合同上映会がある話を聞いていて。
その友達と一緒に見に行った中に『ゼネラルプロダクツ』っていう『ガイナックス』(アニメ制作会社)の前身となる会社が作ってた、DAICON FILM(ダイコンフィルム)っていう、大阪のSFの大会のオープニングムービーをアマチュアが作ってたんですよね。それのメインスタッフが庵野秀明で。それを見て、学生時代から知っていたんですよね。
――東京の専門学校からアニメーターに
【鶴巻監督】
東京のアニメの専門学校に通っていたんですけど、ダイコンフィルムを作っていたスタッフが、「王立宇宙軍 オネアミスの翼」っていうアニメを、「プロ」になって作ります、という話があった。
ダイコンフィルムって、アニメオタクっぽいフィルムなので、「王立宇宙軍」も、そういうちょっと半裸の女の子とかが宇宙戦艦でドンパチするみたいな映画なんだろうな、と勝手に想像していたら全然違う!
もっとハードな…SFではあるんだけれど、架空の世界の宇宙開発みたいなのを丹念に描く、みたいなSFアニメで。びっくりしたのを覚えてますけどね。

ロケットの打ち上げシーンとか、爆発戦闘シーン…戦争のシーンとかで庵野がもうほんとすごいアニメーションしてて。「王立宇宙軍」の後に、今度はそのスタッフが、「ふしぎの海のナディア」という、NHKの長編アニメシリーズを作るっていう話を聞いた。なんかスタッフ集めてるみたいって話を聞いたので、勤めていたアニメーターの会社を辞めて、ガイナックスに「手伝わせてください」って言って参加した。

鶴巻監督は「風景全体を描くのが好き」

【鶴巻監督】
メカは結構、大変なんですよ!メカを描くアニメーターが結構少なくなっていて、希少価値になりつつあるんだけど。メカはもちろん好きなんだけど、描くのは大変なんですよね。
僕自身は結構、「レイアウト」って言われる、その空間全体を描くんですよ。キャラクターだけを描くんじゃなくて、キャラクターがいる「部屋の中」とか。
例えば「公園にいる」とかは、公園描かなきゃいけないし…階段のとこにいるなら階段を描いて、そこにキャラクターが立ってるとか座ってるとか、っていう感じで描くんですけど。その風景全体を描くのが僕は好きで。

よく描いてたのは…漫画のキャラクターを描いていたんじゃなくて、風景全体を描く、みたいなのが好きだったので、それは今でも役立ってるんです。
(以下、ネタバレあり)



「ララァ・スン」を登場させた意図は

——ララァを生かしたのも、企画の段階から決まってたことなんですか?
【鶴巻監督】

ですね!
「シャロンの薔薇」っていうその「エルメス」ごとこっち(ジークアクスの世界線)に来ていて、ララァがこの世界をおかしくしてくれる、というのもあって(決まっていた)。
あ、でも、おかしくしてくれるというか…その、ジネアのシャアがガンダムに乗ってしまって、結果的にジオンが勝ってしまう世界…のきっかけを作ったのは、そのララァである、と最初から決めて進んではいたんですよね。

ただ第9話で、「こっち側」の世界のララァが出てくるんですよ。
その「シャアに会ってないララァ」が出てくるんだけど、そこは行き当たりばったりでしたね。
だからほんとなんか結構どっかでも言ってると思うけど、もともと9話は全然別のエピソードが入る予定で。
マチュが地球に行くんだけれど、地球で会うのは全然違うキャラクターだったんですよね、本来は。
【鶴巻監督】

ただ、プロット段階で、そのプロットだとあんまり上手くいってないんだよなと思って。
あそこは結構粘って、何回かやり直してプロット書き直してて。
その段階で、やっぱり(マチュが会うのは)ララァだったらいいのでは?という話になって。

それが一番上手くいくんじゃないか、とララァでやったら、めっちゃ上手くいった!というね。
—— マチュがもともと会う予定だったキャラクター、っていうのは誰だったんですか?
【鶴巻監督】

そもそもは、庵野が「X」で、「マチュが会うのは、もともとは別のキャラクターだったんですよ」みたいなことを呟いてて。
そしたら、「ククルス・ドアンだったんじゃないの?」というウワサが流れたんですよね。

そのウワサが流れた直後に、庵野が「島の人ではないよ(ククルス・ドアンじゃないですよ)」と仄めかしたやり取りが、放送当時にもあったんだけれど…
その後、劇場版(機動戦士ガンダム ジークアクス ビギニング)再上映の時の…舞台挨拶かな。
その時に(シリーズ構成の)榎戸さんから、「本来あそこでマチュが会うはずだったのはミハルで、ミハルとマチュが会って、そこでやりとりがある(予定だった)」、みたいな話をしたんですよね。

僕も、ミハルは好きだったんですけど、そのプロットだけで見ると、あんまり上手く…
面白く展開されてないんだよなぁ…と思っていて。
それで、もうちょっと何とかならないかな、ということで色々考えて、結果的にはパラレルワールドっぽく、別の「ララァ」…
いわゆる"こっち"の世界のララァがちゃんといて、別の人生を送ってます…は、パラレルワールドの表現としては上手くいったし、今にしてみるとめっちゃ良かったなぁ、と思っています。
―――単独インタビュー③に続く
30 件
〈 1 / 1 〉

RANKING 人気記事

ランキングをもっと見る

カテゴリから探す