演出家
「では、記憶力ゲームの説明をします。
そしたら、恵比寿、池袋、新橋、荻窪・・・」
演出家は急に、
都内の駅名をつらつら述べ始めた。
なんだなんだ・・!?
周りもポカンとしている。
演出家は、さらに続ける。
演出家
「・・銀座、新橋、池袋、高田馬場。
はい、まずは今私が言った“8つの駅名”を、みなさん順番通りに覚えましたね?」
・
・
・
な、なぬ!?
これ、もう始まっているのか!?
油断の隙もありゃしない・・・
周囲のみなは頭を抱え、
絶望に満ちた表情をしている。
演出家
「ふふふ、さすがに今のはいじわる過ぎたね。
じゃあ、もう一度だけ言うよ。」
よ、よかった!
次こそ聞き逃してはならぬ!!
演出家
「恵比寿、池袋、新橋、荻窪、銀座、新橋、池袋、高田馬場。」
…え?
途中で同じ駅名、いくつか出てきてない!?
こ、混乱する・・・
演出家
「はい、みなさん覚えましたか?」
やばい全然集中できない・・・
全然覚えられん・・
どうしよう・・どうしよう・・
演出家
「じゃあ、最後にもう一回だけ言いますよ。」
こ、これが最後のチャンスだ!!
こうなったら、頭の中に・・・
「路線図」を描いて覚えよう・・!
僕はいつも何かを覚えるときは
頭の中に「絵を描いて」覚える癖がある。
学生時代などの試験勉強のときは、
単語や用語をそのまま覚えるのがとにかく苦手で・・
「あ、これって、教科書の53ページの
あの左端の部分に書いてあった内容だな・・」
と、教科書のページを丸ごと
「絵」や「画像」として覚えることが得意だった。
(※そういう覚え方のできない科目は、案の定、点数が酷かった。)
という訳で・・
やっぱり何かを覚えるときは
この「絵を描いて」覚える方法以外・・
僕にはない!
演出家
「じゃあ最後ですよ。恵比寿、池袋、新橋、荻窪・・」
僕は頭の中に、
都内の路線図を描き始める。
「えーっと、”恵比寿”から山手線で”池袋”を回って・・
”新橋”に行って、それから途中で中央線に乗り換えて”荻窪”に向かって・・」
と、
路線図の上を実際に
電車が走る道順のとおりに
指で沿って行きながら・・
僕は演出家の放つ
“駅名”を順番に確実に覚えていった。
そして・・
「よっしゃ、完璧に覚えられた!」
なんとか、
そのやり方が成功したのだ。
最初はフルーツの方が良いかもと思っていたが、
結果的に路線図を想像できる”駅名”が採用されてよかった・・。
これは確実に・・
僕の方に追い風が吹いてきているぞ。