演出家
「はい、では、10分休憩します。
休憩後はもう一回、今のシーンをやります。」
8人はぐったりしながらも、
それぞれがその指示に反応する。
「え!?もう一回、今のやるの!?
っていうか、今のシーンは何!?」
僕は、前夜に読んできた台本の中に、
こんなシーンがあることを把握していなかった。
もしかしたら・・
「中盤以降、飛ばして読んだ中に、
このシーンがあったのかもしれないな・・」
僕は慌てて、
台本をパラパラめくりながら
今のシーンがどこか確認した。
しかし・・
「え!?全然見つからない・・なんなんだ、このシーンは・・」
それらしきシーンのページを
僕は台本の中から見つけることが出来なかった。
謎はどんどん深まっていく。
「なんなんだよ、台本にもないシーンを20分近くもやって・・
もう意味が分からなすぎて怖い・・・」
オーディションの時も
このように半エンドレス形式の演技審査は何度かあった。
しかし、あれはオーディションであって・・
これは“舞台の稽古”だ。
「舞台の稽古って、台本に沿ってやらないモノなの!?
全然、分からなすぎる!!」
もうダメだ。
僕の未経験&知識ゼロの頭の中で
これ以上考えたって答えは見つからない。
と言う訳で、僕は・・・
隣に座っていたヒノ君に、
今のシーンについて、すがる様に聞いてみた。
僕
「ねぇ、今のシーンって何だったの!?こんな20分もかけて、どのシーンなのか、台本の中に全然書かれてないし・・僕が初めてだから理解できないだけかな?他の稽古もみんなこんな感じなの!?」
ヒノ君
「え?今のシーン、ちゃんと、書いてあるやん。ほらコレ」
僕
「・・・え?!」
ヒノ君は、今のシーンに該当するページを教えてくれた。