しかし・・
演出家から
次に放たれた言葉は
“意外なモノ”だった。
演出家
「セリフを与えるといっても、こちらから決まったセリフをみなさんに与えるわけではありません」
え?
演出家
「その役のキャラクターで、その場に立って、自然と出た言葉を”セリフ”として採用します」
みなの顔色が
だんだん曇り始める。
つまり、セリフは
“遺族たち自身が考える”
ということである。
演出家
「という訳で、遺族の登場シーンから稽古をスタートします。好きなタイミングで、何か言いたい言葉が出てきたら、自由に言ってみてください」
自由に・・
とは言っても・・
いくらリアルを追求する芝居だといっても
台本上では決められたセリフの掛け合いがある。
会話の最中に身勝手に
セリフを差し込んでしまったら、
その間の会話は
成立しなくなる可能性が高い・・
それこそ、
「リアル」ではなくなり
ただの「段取りお芝居」
となってしまう恐れがある・・!
「(これは、さすがに難しすぎないか・・・?)」
演出家
「では、遺族登場のシーンからスタートします、みなさん準備してください」
そう促され、僕ら“遺族たち”は、
不安を隠せないまま、登場の位置に準備した。