「いやでも、なんとかなるはずだ・・」
前日の2次審査だって、
重要な“演技審査”では何もできなかったけど・・
特技の”トランプマジック”の
おかげで「印象に残る」ことができたんだから。
どこをどう評価してもらえるかは・・
演出家の好み次第だ!
よし。まずは、折れない心。
何が「合格基準」
になるか分からないのだから。
これからどんな審査が待ち受けていても、
まずは、気持ちだけでは絶対に折れてはならないぞ!
「では、演出家が到着しましたので、
これから最終審査を開始します。」
そう女性のスタッフさんが言うと・・
あの”ガタイの良い”
”いかにも業界人っぽい”
只者ではない演出家が・・
ゆっくりとスタジオに続く階段を下りてきた。
演出家
「ふふふ・・・」
演出家は不気味な笑みを浮かべ、
参加者のみんなをじっと見渡しながら・・
審査員席の方へ向かってゆく。
「なんてオーラなんだ・・」
演出家の放つ覇気を前に、
僕の足はガタガタと震え続ける。
そして、演出家が僕のすぐ横を
通り過ぎようとした
その時
演出家
「君、何で私服のままなの?」
僕
「あ!す、すみません!
着替えを持ってきてなくて・・」
演出家
「君、
・
・
・
印象悪いね」
僕
「ぬおっ!!」
そう言い残して、
演出家は審査員席の椅子に腰を下ろした。
演出家
「ではこれから最終審査を始めます。
まずはみなさん一定の距離をとって・・・」
演出家が、何か話している。
しかし僕の耳にはその内容は一切入ってこない。
だって前日、
「君、印象いいね」
・
・
・
審査通過。
そして今日、
「君、印象悪いね」
・
・
・
絶対に落ちるじゃん!
絶対に落ちるじゃん!!!
周りの参加者は、演出家に指示されて、
一定の間隔を開け始める。
「え?」
僕は何が始まったのか
よくわからないまま
とりあえず、
みんなの邪魔にならないよう
同じように一定の間隔をあける。
演出家
「これから、みなさんにはストレッチをしてもらいます。
彼女と同じポーズのストレッチを行ってください。」
演出家はそういうと、
横から先ほどのスタッフの女性
(※以降、ストレッチレディ)を連れてきた。
ストレッチレディ
「みなさん宜しくお願いします。
では、これからストレッチを開始しますので、私と同じポーズをとってください」
そういうと、ストレッチレディは
いきなり難易度の高いポーズを取り始めた。