舞台監督
「では、“Bキャスト”で、冒頭のト書きのシーンの場当たりを開始します!よーい、ハイ!!」
舞台監督の合図で、
“場当たり”は再開となった。
直前のAキャストと同じように
“場当たりのお芝居”は続いてゆく。
確かに完全ヤンキーが言っていた通り
少し僕自身が冷静になってみると
場当たり中の容疑者8人のお芝居は
形式上、熱量は保たれているが・・
しっかりと“確認作業”を行いながら
お芝居をしているようにも見受けられた。
しかし・・
「(大事なことって・・何だろう?)」
僕は完全ヤンキーから出された
お題のことで頭がいっぱいになっていた。
しかも
『場当たり中にケントが自分で気が付けるかもしれへんから~』
とのことである。
もうそれが
気になって気になってしかたがない。
いつもなら何でも優しく
教えてくれる完全ヤンキー。
そんな彼だからこそ、
あえて僕に“考えさせる”という部分に
何か大切な”意図”が
あるようにしか思えなかった。
「(きっとこれは、自分自身で気づくことに意味があるはずなんだ・・)」
僕は、食い入るように
場当たりの様子を見続けた。