「やべぇ、全然台本読み終わらない・・」
舞台の上演時間は、
だいたい2時間くらいのものが多い。
その2時間分のセリフが詰まった台本は
およそ100ページ以上に及ぶ。
とは言っても、
黙読して早読みすれば
普通ならば“1時間”もかからず
読み終えることができるだろう。
しかし・・・
僕の場合、
“そう”ではない。
実は僕、
“活字”を読むのが、
大の苦手なのである。
漢字が読めないとか、
難しい言葉が分からない、
という訳ではないのだが・・
何度も、何度も、
同じ行、同じページを読み返さないと・・
頭の中でそのシーンや場面の
イメージを“具現化”することができないのである。
そんな感じだから、学生時代、
国語のテストはとても苦手だった。
早く読もうとすれば頭に入ってこないし、
ゆっくり読めば答案を書く時間がなくなってしまう。
「文系」と言われる科目は
揃いもそろって、平均以下の成績だった。
さらに、それに加えて
苦手なことはトコトン
集中力が続かないタチなため・・
眼では文字を読み進めているつもりでも
無意識に頭の中では全く違うことを
想像してしまっていることが本当に多い。
例えば、
ミステリー小説を読んでいるとき
ふと気が付くと、
頭の中では鳥取砂丘を旅していた
想い出を振り返ったりしている。
文章量の多い漫画を
読んでいるときもそうだ。
気が付けば、
中学校時代の陸上部の
キツイ練習メニューを思い返していたりする。
もう、自分でも意味が分からないのだ。
そんな状態だから、
数ページ進んだあとに・・
「あれ?今、何を読んでたんだっけ・・!?」
と、なり
数ページ前に遡って
読み返すという作業が
15分に一度は訪れる。
そんな男が、これから・・
「役者」という道を
歩み始めようとしている。
もはや、恐怖である・・
ちゃんと、やっていけるのかな僕・・
いや、大丈夫。
やっと掴んだ夢への第一歩なのだから。
大丈夫だ。
今は、そう言い聞かせるしかない。
と・・
台本を読みながら、
こんな感じで僕の頭の中は脱線し続けている。
そんなこんなで、
初稽古の前夜は・・・
すでに
午前3時を迎えていた。