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演出家の状況説明




では、稽古を再開します。



演出家がスタジオに続く階段を
下りながらそう言った。


容疑者役と代役の計8人は、

同じように両手に手錠、
目にはアイマスクをつけられて・・

並べられたパイプ椅子にそれぞれ腰を下ろした。


アイマスクをつけていても、
稽古場の灯りが点いていると
まだ微かに明るさを感じ取ることができるが・・。


では、電気を消してください。


演出家がそう合図すると、
スタジオの電気は消灯。


そうなってしまえば、
目の前は“完全な暗闇”状態だ。


カサハラ
「(稽古だと分かっていても、何も見えない状況で両手の自由も効かないとなると、やっぱり緊張してくるな・・・)」




僕は一度深く息を吸い、大きく吐いた。


カサハラ
「(よし、頑張るぞ・・!)」



演出家
皆さんは今、薬で眠らされて・・・



いつもと同じように演出家が状況説明をする。


カサハラ
「(別に何度もやっている訳だから、もう説明する必要ないんじゃないかな・・?)」



僕は、ふとそう思いながらも、
アイマスクの中で目をつぶる。


演出家
では、いきます。・・・パンっ!!!




そして、この日2度目の
”冒頭のト書き”のシーンの稽古が始まった。


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カサハラケント
カサハラケント (笠原賢人) 1988年5月17日生まれ 新潟県新発田市(旧紫雲寺町)出身 2011年、大学を卒業後、 役者・絵描き・クリエイター活動を開始。 役者としては、 主に舞台(40本以上)やCM等で活動。 絵描き・クリエイターとしては、 個人や企業・行政から依頼多数。 横浜の商業施設でのグッズ販売に、 ZeppTokyoで開催されたファッションイベントでは 自身作成のロゴがメイン採用。 2019年には、 地元新発田市の図書館で個展も開催。 また、2018年からは 新発田市と共同でプロモーションムービーを制作。 2021年に高校生とともに企画・制作したCMは 「新潟ふるさとCM大賞」で準グランプリを獲得。 その他にも、 舞台やコントライブの脚本や、 人気バンドユニットの小道具制作など 幅広くクリエイター活動を展開。 将来の夢は、 「新発田で映画を撮る」こと。 そして、全国の人に 「新発田」を「しばた」と 読んでもらえるようになること。