「ケントさん、俺と一緒に舞台作りません?」
とある舞台の打ち上げで・・
共演者のケイスケから
予想もしていなかった話を持ちかけられた。
これまでは”出演する”側、
ばかりだったカサハラ青年だが
このケイスケの一言をキッカケに・・・
そのステージは、だんだんと
”創り手”側に移り変わっていくことになるのだった。
これが
カサハラ青年の役者物語の
「最終章」となる。
ケイスケ
「今回の2人芝居。ケントさんの台本でいきましょう」
カサハラ
「え!?」
ケイスケからの
まさかの一言に僕は驚いた。
カサハラ
「いや、でも、まだまだ完成まで程遠いし・・台本の成熟度としても、ケイスケの方が遥か先を行ってると思うけど・・」
ケイスケ
「俺のは、別にいいんです」
カサハラ
「え?」
ケイスケ
「俺は最初からケントさんの書いた台本でやりたいって思って、2人芝居に誘ったんです」
カサハラ
「・・うん」
ケイスケ
「でも、ケントさんの性格考えると、正直、ちゃんと台本書いてくれるか心配だったんで・・」
カサハラ
「え?」
ケイスケ
「書かざるを得ない状況にしてみたんです」
カサハラ
「な、なぬ・・」
ケイスケ
「ケントさん、追い込まれないと何もしない人だから、俺も本気で台本書いて、ケントさんのやる気を促したんですよ」
カサハラ
「そ、そうだったの・・!?」
予想外のことだった。
まさか、ケイスケが
そんなことまで考えていたとは・・
ケイスケ
「で、結果。ケントさんが書いてきてくれた台本・・まだまだ完成まで遠いですけど、めちゃくちゃ面白いです」
カサハラ
「え・・本当?」
ケイスケ
「まだ、ラストまで考えてないって言ってましたけど、どんな展開になるか楽しみですもん」
カサハラ
「そ、それはなんと嬉しい言葉だ・・」
内心ホッとしたというか・・
さすがケイスケだなというところ。
ケイスケ
「これから台本完成まで大変だと思いますけど、楽しみにしてますからね」
カサハラ
「おう!またヤバいと思ったら、俺をどんどん追い込んでくれ〜!」
ケイスケ
「もちろんです。任せてください!」
一番信頼のおける役者仲間は
想像以上に僕のことを理解していたのだ。