2人
「お疲れさ~ん」
カラカラに乾いた体を潤すように
僕は一気にビールを流し込んだ。
カサハラ
「ぷはぁ~!!」
完全ヤンキー
「おお!カサハラ君、ええ飲みっぷりやん!」
カサハラ
「やっぱり稽古が終わった後のビールは格別ですね」
完全ヤンキー
「いやいや、カサハラ君、今日が初めての稽古やろ?!何を言ってんねん~」
カサハラ
「ハハハハハ!!」
21時過ぎから始まったこのサシ飲みは
お酒、おつまみ、たわいのない会話という・・
”至極のひと時”によって、
瞬く間に時計の針は何周も回っていた。
そして・・
完全ヤンキー
「お、そろそろ俺、終電の時間やわ~!ほなお開きにしよか~」
カサハラ
「え!もうそんな時間ですか!?もう少し飲みましょうよ~」
半ば強引に完全ヤンキーから
居酒屋の外へ連れ出されると
少し冷たい夜風に吹かれながら、
地下鉄まで一緒に歩いて向かった。
カサハラ
「夜風が良い気持ちいいですね~」
完全ヤンキー
「せやな~!役者やってるとな、こういう気持ち良さ、もっとぎょうさん味わえるんやで~」
カサハラ
「そうなんですか?・・役者って、なんて最高の職業なんだ・・・」
完全ヤンキー
「せやろ~!・・“ケント”、これから色々よろしくな~!」
カサハラ
「か、完全ヤンキーさん・・こちらこそ、よろしくお願いします!」
僕と完全ヤンキーは、
かなり仲良くなっていた。
そう。
これが僕にとって
初めてできた
“役者仲間”だった。
完全ヤンキーとは
”新宿駅”まで一緒の電車に乗り
そのあと解散。
そして僕は”新宿駅”でスマホを開き、
自宅へ向かう乗り換え案内を確認して
案の定、途方に暮れる。
「俺の終電、もう終わってるやん・・・」
こうして僕は、
最寄り駅までの終電を逃したのだった。