台本もおよそ半分まで読み進めた辺りで
帰路もちょうど半分くらいに差し掛かっていた。
とは言っても、
まだ6~7キロは残っている。
「台本を読むのに集中できていたとはいえ・・・やはり稽古初日の疲労感の中、13キロ歩いて帰宅するのは、なかなかしんどいな・・・」
時計の針も気が付けば
“2時半”を回っていた。
「ここからが正念場だ。明日の稽古に向けてしっかり残り半分の台本を読み込んで、なるべく早く家に帰って体も休めよう・・!」
眠気にも襲われながら
僕は台本をスマホの明かりで照らし続け・・
時折MAPアプリで経路を確認しながら
着実に歩を進めていった。
そんな時だった。
『プツッ』
「え?」
急に照らしていた明かりが消え
台本のページが真っ暗になった。
「げっ・・・・・スマホの電池切れた・・・」
最悪の事態に陥ってしまった。
まだ帰路を半分近く残している状態で、
スマホの充電が切れてしまったのだ。
「え、待って・・これじゃあスマホの明かりで台本を読むことはもちろんのこと・・・自宅までの帰り方も分からなくなってしまったぞ!!!」
真夜中の2時半。
初めて通る道。
そして・・・
MAPアプリで
”最短距離”で帰る設定にしていたため・・
今歩いているのは狭い路地。
周りは完全な住宅街。
「さ・・最悪だ。今ここがどこなのか全くわからない・・」
辺りは街灯の明かり以外、真っ暗闇。
もちろん、
こんな時間に人など出歩いていない。
むしろ出歩いている人がいたら
逆に怖いくらいだ。
「と、とりあえず、場所がわかるところまで何とか出てみよう・・」
これ以上分からない道を進むのは危険と判断して
とりあえず僕は、来た道を戻りながら、
帰り道の道標となる
”青い看板”を探すため大通りに出るのを目指した。