「いかんいかん!」
余計な思い出が邪魔をして、
一瞬集中が切れてしまっていた。
「よし。改めて、読み進めよう」
僕は、再び歩きながら読み進めた。
しかしまぁ、歩きながら読むと
これほどまで頭に中に入るものだとは思わなかった。
歩くことで脳が活性化されるのか?
歩くことで余計な情報が
入りにくくなったりするのか?
まぁ理由は良く分からないけれど
この「歩きながら台本を読む」という方法は
これまでの常識を覆すほど
衝撃的なものだった。
と、良い感じの集中力を
保ちながら台本を読んでいくと・・
「ふむふむ・・・そういうことだったのか・・!!」
稽古初日では見えてこなかった
それぞれの登場人物のキャラクターが・・
ハッキリと
“かたどられてきた”感覚になった。
「なるほど・・・役の言葉遣いや感情の動きを見ていくと、そのキャラクターの人物像がだんだん見えてくるんだな・・」
「なんだ、この2人はカップルだったのか・・・」
「この人は、あの人に恨みを持っていそうだな・・・」
などなど・・・・
それぞれの役、
そして、この作品の世界観というものが
くっきりと、浮かび上がってくるようになってきた。
「そうなると、僕ら”遺族たち”というキャラクターの役割としては・・・・」
”キャラクター”を作り上げる為には、
自分でその“キャラクターだけ”を掘り下げていくのではない。
他のキャラクターの存在、関係性、世界観が
”自分のキャラクター”を形成するためのヒントになっているのだ。
「よし・・そうしたら、僕の“神谷椎太郎”は・・・もっとこういう人物である方が自然かもしれないな・・」
台本を読みながら、
時折、”神谷椎太郎”の人物像に
関連付けるヒントを拾い上げては、
一旦読むのを中断し、
頭の中でイメージを膨らませて・・・
ボヤっとした状態の“神谷椎太郎のふち取り”を
どんどんシャープなモノにしていった。